湖北、観音の里で茉莉花像
う~ん…、これは、う~ん…、どう表現したらいいのだろう。優しさ、気高さ、凛々しさ…いや、美しい~と言えばそれでよいのかな。ギリシャ彫刻のビーナスというのでもない。日本の、新しい時代の、観音彫刻ではないか。何度も見あげ、何度も見とれて、見惚れた。
観音の里、滋賀県湖北・高月町の図書館前庭である。高い台座の上、女性の立像は1㍍5,60㌢くらいか。素足、両手は身体にそって左右に広げる。右の肩から薄い着衣を掛け、髪は後ろになびく。口元を結ぶお顔、憂えがある。戦後、日本を代表する世界的な彫刻家、舟越保武さんの作品「茉莉花」である。茉莉花はマツリカ、白く咲いて香るジャスミン。
図書館2階には、近くの渡岸寺(向源寺)の国宝、十一面観音立像を小説「星と祭」で書いた井上靖の記念室がある。茉莉花像の隣に井上靖さん「聖韻」の文学碑が並ぶ。~……平成の新しい時代を迎えて、……この町(高月)に茉莉花の精が、どこからともなく現われ、美しい裸婦像となって、広場のまん中に、すっくりと立たれた。平成の、新しい観音像と申し上げたい。凛とした、近代的なお姿である~。平成の終わり、高月町での葬儀帰り、偶然見た。
※ 舟越保武(1912-2002)岩手県一戸町出身、東京芸大名誉教授。宮城の佐藤忠良の親友でライバル。「長崎26人殉教者記念像」は代表作、高村光太郎賞。 ※ 井上靖の「聖韻」全文は以下の通り。~有名な渡岸寺の十一面観音像を初めとして、沢山の衆生済渡の仏さまたちが、静かに立たれたり、お坐りになったりしている古い町。琵琶湖を隔てて、遠く比良山系を望める美しい町、高月。平成の新しい時代を迎えてからのある日、そこの明るい広場、町の聖地に、一つの事件が起った。この町を象徴する花とされている茉莉花の精が、どこからともなく現われ、美しい裸婦像となって、広場のまん中に、すっくりと立たれた。平成の、新しい観音像と申し上げたい。凛とした、近代的なお姿である。世界規模を持つ瞑想の町、信仰の聖地、湖畔散策の町としての、新しい時代の、新しい高月は、この日、このようにして生まれた。~
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