重文の「安南渡海船額」って
日牟禮八幡宮の社宝「安南渡海船額」って、御存じだろうか。日牟禮は〈ひむれ〉と読み、近江商人の守護神とも言われ神社で、JR近江八幡駅から北西へ徒歩30分。信長ご縁の左義長祭りで知られる。その神社の絵馬堂に掛っているのが「安南渡海船額」である。
重文なので、京博に寄託してあり、掲額は複製で、行けば、いつでも見られる。どんな謂われがあるかというと、1623年(元和9年)20歳の時に長崎から安南へと渡り、貿易商として活躍した近江商人・西村太郎右衛門が奉納した額という。団翁のような帆をはった船が白波を蹴って進んでいる。船内には、鳥帽子、団扇の人物などが描かれている。
安南は当時、朱印船貿易の一つで、ベトナム。安南って、そうなん!と洒落たくなるけど、太郎右衛門はそこに20年近く滞在。1647年(正保4年)に財を成し、長崎へ戻ってきたが、鎖国政策で上陸が許されず、失意の中、安南に戻った。そのおり、長崎の絵師に描かせ、故郷の日牟禮八幡宮に奉納させたという。奉納から360年余り、絵馬堂にある複製を見上げた。鎖国で望郷の思い果たせずの額絵。日牟禮て?、遠し。
※ 滋賀県百科事典によると、額は正保4年(1647)3月の銘があり、絵師は菱川孫兵衛。額は64.2×72㌢。1635年(寛永12)に日本人の海外渡航・帰国を禁止する鎖国令が出されて11年たった年で、西村太郎右衛門の近親者が安南国に居住する肉親の望郷の念を思い、帰国をねがって奉納したものと考えられると記述がある。
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