黄ばんだ色紙サインの思い出
指を二本立てる「サインはV」のサインではない。著名人が書く色紙のサインのことである。飲食店がよく店内の壁に貼っている、あれだ。たいがい、誰のサインか、わからないことが多いが、それはそれで、店のステータスであり、自慢であり、大事なお宝なのだ。
滋賀県庁前、旧東海道沿いにある飲食店「味さかえ」もそうだ。今の店主のお父さん、福田与一郎さんが斜向かいの滋賀会館に勤務していた。その縁か、会館ホールの舞台に上がった役者さんが食事をよくとりに来て、「味さかえさんへ」と色紙を書いた。店内のずっと奥、TVの下あたりだ。お相撲さんの手形含め、横2段と上下とで15、6枚は並ぶ。
黄ばんできた色紙の一枚一枚、店主の奥さんが覚えている。頭の先から声を出すように言う。これは、加藤登紀子、新派の安井正二、宇野重吉劇団の米倉斉加年と日色ともえ…。日色さんの色紙は~1987 9 17~と日付入りだ。もう23年も前である。日色さんはその時の食事はソーメン。食の細い人と思ったという。米倉さんはすき焼き定食、右下の横山ホットブラザースは栄え定食だったと。記憶いいねえ?と言うと頭が若かったと。
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