北斎の虎、月見てうっとり
虎さん、月を見てうっとりしている。竹笹に腰を落とし、首を伸ばし、顔をあげて、目はパチリと開けている。お月さんは満月だ。夢みる夢子みたいで、どこか、漫画っぽい虎だ。浮世絵師・葛飾北斎が最晩年に描いた「月みる虎図」である。
滋賀近代美術館の「葛飾北斎展」で見た。版画でなく、肉筆画だ。島根県津和野の北斎美術館が所蔵している。北斎は晩年、版画の世界から遠ざかり、一枚一枚の肉筆画に力を入れた。役者絵などの風俗画は少なく、動植物や故事古典の題材が多かったという。この展覧会も柳に牛、鶏、猿、夕顔、福助、狐の嫁入りの肉筆画があった。
月にうっとりの虎は、96.2×29㌢で、縦長の軸になっている。弘化元年(1844)の作品だ。老衰で、90歳で亡くなる5年前だ。図録によると、目は黄色、鼻は藍色をわずかに使っているだけで、地味な色調でまとめているーと解説してある。右下に小さく「八十五老卍筆」の落款がある。「八十五」は年齢だろうが、マンジの卍の意味がよくわからない。会場でも図録でも、何度もマンジ、マンジと見た。???。


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