昔がたりは今がたり
明治の洋画家、黒田清輝の代表作「昔がたり」の下絵コピー=写真=が、京都・東山の清閑寺境内の立て札にある。本画はもう焼けてない。絵の題名どおり、昔がたりになってしまった。何で清閑寺?、焼失?、どうして、どうして-である。
清閑寺は平家物語のヒロイン・小督の局ゆかりの寺である。小督を思った高倉天皇の御陵は隣。雪が舞った29日に謎解きに行った。9年間のフランス留学から帰った黒田が、京都で遊んだおり、ここで僧から小督の悲恋を聞いて、現実離脱の不思議な感動を覚え、それが絵を描く着想になったという。
焚き火、笛を吹く仕草の僧、旦那に寄りかかる舞妓、屈みこむ仲居、通りがかりの草刈娘…みんな実在の人物だそうだ。制作歳月はこの一枚の絵に何と2年、本人に会い、スケッチを重ね、下絵は10枚以上という。百年前の黒田最傑作だそうだ。今がたりの、この境内立て札の前に立つと、焼失本画がどんなんだったか、余計に思いが募る。小督恋しくもあり、本画恋しくもありーであった。
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